事件簿

波乱万丈だった留学生活をお教えしましょう






ELKHART (INDIANA)
事件その1事件その2事件その3事件その4事件その5

MINNEAPOLIS (MINNESOTA)
事件その1

SAN DIEGO (CALIFORNIA)
事件その1事件その2

INDIANAPOLIS (INDIANA)
事件その1

GREENFIELD (INDIANA)
事件その1

LOS ANGELS (CALIFORNIA)
事件その1



インディアナの時刻と気温
ミネソタの時刻と気温
カリフォルニアの時刻と気温













ELKHART での事件







腹減った・・・。


ここ Elkhart に来て2週間ほど経った。


現在体重激減中。


2週間で4kgも体重が落ちた。


原因は食事をくれないホストマザー。


夕飯がない時だってあります。


もう我慢の限界だ。


高い金払ってはるばるアメリカに俺は何しに来たんだ?


ダイエットじゃないだろ・・・。


このままの生活をしていたら死んでしまう。


日本に生きて帰れるか非常に心配だ。


こうなったら直談判だ!


おい!貴様!ちゃんとしたもん食わせろってんだよ!JAP をなめんな!


ぐらい言ってやりたいですよ。


言ってやりたいですよ・・・。


でもそんな英語力もないし、


もし言ったら奴隷の如くこき使われて、


そのうち刻まれて売られるかもしれない。



それぐらいホストマザーが悪魔に見えます。


もう腰を低くして申し訳なさそうに相談しましたよ。


プライドも何もズタズタです・・・。


すると案外優しく対応してくれました。


冷凍食品を毎日買い与えてくれるそうです。


裏を返せば毎日冷凍食品しか食えないわけで・・・。


それなのに、それなのに・・・


すごくありがたく思える自分がイヤです。


次の日、さっそく買ってもらいましたよ。


これでやっと腹も膨れる!


そう思っていた俺はバカでしたよ。


買ってくれたのは小さな小さな冷凍食品。


片手を大きく広げたら乗ってしまうぐらいの小ささ。


厚さも2〜3cmほどしかありません。


裏の成分表を見てみました。


高いのは脂肪分と塩分ばかり。


カロリーたったの 250kcal です。


朝は毎日シリアルだからこちらも 250kcal ほど。


俺、朝夕で 500kcal しか摂取できません。


俺は先日17歳になったばかり。


仮にも成長期のど真ん中です。


しかも今日は体育でテストがあるんです。


種目は長距離走。


その距離1マイル。ざっと1600mです。


毎日汗をかいたと風呂に入る口実にするために取った体育の授業。


しかし飯食ってないのに動かなきゃいけない。


信じていたヤツに裏切られた感じです。


とりあえずバレないようにシリアルを多めに食べて登校。


多く食うと怒られるあたり、間違ってるだろ。


1時間目はいきなり体育です。


短距離走ですでにその名を知らしめた俺。


長距離走で汚点を残すわけにはいかない。


短距離・長距離共にクラス3位以内の伝説を作る!


そう心に決めて授業に参加。


友達もいないし、英語も話せない。


クラス内に友達を作るにはもってこいのチャンスだ。


柔道部で4年間鍛え上げたこの肉体。


体脂肪は10%未満に絞り込み、毎日ベンチプレスで鍛えた。


勝つ自信はあった。


日本でクラス3位は難しくてもここはアメリカ。


肥満体系が大多数を占めるこの中でなら勝てる。


今日の準備体操はいつもより念入りに。


準備体操の次は腕立てと腹筋。


気合い満々でこなしていく俺。



ハニーをベッドへ運ぶための筋肉なら喜んで鍛えよう!




まだ彼女いないけどね・・・。


いよいよスタートだ。


ラインに立って合図を待つ。


パンッ!


俺は勢いよく飛び出した。


先頭集団と共にゴールまで行ってやる!


トラックを10周ぐらい楽勝だ。


3周目で早くもビリに1周差をつけた。


さらに4周、5周と走り続けた。


先頭集団もいつしか俺を含め4人になっていた。


周りはみんな陸上部だ。


ここからが本番だ。


9周目に入って一気にラストスパート。


俺についてラストスパートをかけたのはたった1人。


俺と共に白熱したデッドヒートを繰り広げる。


10周目に入ってもなお競り続ける。


数え役の女子たちも黄色い声を上げる。


友達のいない俺にも「Tak! Come on!」と応援をしてくれた。


残り半周。


最後だ!出せる限りの力を出して走った。


その時だった。


世界がひっくり返った。


俺にはそう感じられた。


足がもつれ、そのまま転がるように倒れた。


先生もビックリしてこっちに走ってきた。


屈辱だ・・・。


すぐに立ち上がってゴールを目指した。


結局3位でゴールイン。


目的は果たしたが納得いかない。


みんなにねぎらいの声をかけられた。


そのままロッカールームへ向かい着替えた。


後味悪いまま次のクラスへ向かう。


次のクラスは数学だ。


廊下を急ぐこともなく歩いていた。


その時だった。


再び世界がひっくり返った。


俺の記憶はそこで途絶えた。


目が覚めると俺は横たわっていた。


保健室のベッドで寝ていたようだ。


原因ははっきりしていた。



明らかに栄養不足だ。


まだ天井が少し回っている。


2週間でこんなになるなんて・・・。


自分の体が意外ともろくてヘコんだ。


2週間で早くも倒れた。


俺にとっては人生初の大事件だった。


だが、これから起こる事件の数々の序章にすぎなかった。


言ってみれば屁みたいなもんだった。


これから起こる事件のほんの3%分ぐらいだ。



はっきり言って消費税未満だ。


これから俺の留学生活はどうなるのやら・・・。



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ELKHART での事件2







今日は事件が2つ重なった。


つまり体育の後に倒れた日と同じ日だ。


俺は保健室のベッドに横たわっていた。


この時はまさかこんなことが起こるとは思ってもいなかった。


天井が少し回っていたが大分落ち着いた。


保健の先生が心配してベッドの横までやって来た。


すると全校アナウンスが流れた。


当然何を言っているか分からない。


先生はすぐに保健室のテレビの電源に手を伸ばした。


そこに映ったのは火事のビル。



そう、今日は9月11日。



全世界が震撼した米中枢同時多発テロがあった日だ。




↑ニューヨークにある世界貿易センタービル
通称:WTC(World Trade Center)




ニューヨークのシンボルで、世界の貿易の中心的存在である。


今後の世界情勢を大きく混乱させるであろう事件が起こった。


ハイジャックされた航空機2機がツインタワービルに激突、炎上。


110階建ての世界貿易センタービルは倒壊した。


ワシントンにあるペンタゴン(米国防総省)にも同様に航空機が激突。


さらにペンシルベニア州のピッツバーグにも航空機が墜落した。


この一連のテロの首謀者としてあがったのが、


イスラム原理主義指導者のウサマ・ビン・ラディン氏である。


もちろんこの時はそんなことは知る由もなかったが・・・。


しばらくテレビを見ていた分かった単語はほんの少し。


ハイジャック、テロリズム、ニューヨーク、WTC、ペンタゴンなどなど・・・。


これらの単語だけでも何か事件なんだと分かった。


留学が始まってすぐにこんな事件が起きてしまった。


特にニューヨークにいる留学生の親は心配だろう。


まさかこんな事件が起きるとは思ってもいなかった。


高層ビル群の中でも群を抜いて高い2つのビル。


ワールドトレードセンターは跡形もなく崩れ落ちる。


ナイフ1本で千単位の尊い命が奪われてしまった。


もはや近代都市を破壊するのに兵器は必要なかったのだ。


超高層ビルは上層階が破壊され、後はもろくも崩れていった。


世界有数の情報網を誇る先進国でもパニックには弱かった。


情報が半日以上も錯綜したことを後から聞いて驚いたのを覚えている。


現地時間2001年9月11日午前8時45分、


日本時間同日午後9時45分のことだった。


ハイジャックされた航空機が1W(One World・北側タワー)に激突、炎上。


さらに9時5分。さらなる悪夢が起こった。


またもハイジャックされた航空機が2W(Two World・南側タワー)に激突。


続いてペンタゴン(米国防総省)にも激突。


これには様々な疑問が投げかけられている。


ペンタゴンに航空機は墜落していなかったのでは?など。


その航空機を墜落させるために放ったミサイルが着弾したなど。


とにかくこれもテロリストの仕業である。


さらに悪夢は続くのであった。


ペンシルベニア州のピッツバーグにも航空機が墜落。


旅客の抵抗により墜落したが、ホワイトハウスを目指していたとも言われている。





今後、俺は無事に留学生活を終えられるのだろうか?


英語面より治安面が心配になってきた。


ただただ無事に日本に帰れることを祈る。


最後に全世界の平和と、


犠牲者への冥福を祈って締めくくりたいと思う。




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ELKHART での事件3







Elkhart に来て、早1ヵ月半。


この Elkhart Central High School に通い始めてもう1ヶ月が過ぎた。


でも授業の内容についていくにはまだまだ時間がかかりそうだ。


初めは教科書のどの部分をやっているかも分からなかったが最近は違う。


何とか読んでいる部分を目で追っていけるほどまでになった。


各授業にも話をする友達もでき、学校にも小さな楽しみを見出した。


ようやく学校にも慣れ始めた頃、ちょっとしたトラブルも出てきた。


ここの地域は黒人の割合が非常に多い。ヒスパニック系も多い。


白人が4割、黒人が3割、ヒスパニック系が3割といったところだろうか。


これだけたくさんの人種がいれば日本人が珍しいとは思えないのだが、


俺を珍しがって、かからかってくるヤツが数名いた。


そいつらとは取っている授業も違い、もちろん話したこともない。


当然、俺が危害を加えたわけでもない。全くもって原因が分からないのである。


初めのうちはからかうぐらいだったからよかった。


ランチタイムに消しゴムのかすを投げてきたり、

俺を呼んで知らんぷりしたり・・・。



アメリカ人は大人っぽいというイメージを持っていただけに少し驚いた。


俺にちょっかい出してくるなんて、これはみんな・・・



俺に「ホ」の字だべ?


いや、分かってる。俺はアジア人だけど人種なんて関係ねーよ。


ちょっかい出してないで自分に正直になれよ。


さぁ、おいで、俺がかわいがってやるよ。



・・・・・・・。




まぁ、ちょっかい出してくるヤツらは男なんですがね。


「さぁ、来いよ」なんて言ったらどうなるか分からない。


明日の朝、お尻が痛いよぉ・・・なんてことになりかねない。


ちょっかい出してくる男に対しては徹底的に対抗していかなくては。


大和魂なめんなよ?ってな感じで。


ある日、俺は仲良くなった友達と次の授業の教室へ向かっていた。


すると突然頭をどつかれてよろけた。


振り返るといつものちょっかいを出してくるヤツだった。


いつもの仲間とつるんでこっちを見て笑っている。


俺の友達は背中を押しながら「気にすんな」と言って歩くことを促した。


いや、頭どつかれて気にすんなはねーよ!


頭にきた俺は誓った。



母さん、いつか必ずヤツに天誅をくだします。


もう授業なんて身に入らない。その日は1日中ブチギレモードだった。


その後もちょっかいはエスカレート。


ランチタイムに飛んでくるものも消しゴムのかすから画びょうに変わった。


これにはさすがに友達も黙ってはいなかった。


直接やめろと言うもゲラゲラ笑っているだけ。


そして、ついに事件は起きた。


その日は金曜日。明日は休みだ。


放課後に体育のロッカーに運動靴を忘れたことに気付いた。


スクールバスが来てしまうので足早にロッカールームに向かった。


体育館への廊下は教室が近くにないのでほとんど人通りがない。


ところが向こうから向かってくるのはいつものあの連中。


俺を見つけると笑いながら仲間同士何やら話している。


そして何事も無いまますれ違った、かのように見えた。


次の瞬間、俺は何かにひっかかってバランスを大きく崩した。


振り向くとゲラゲラと笑っている。


そのまま仲間と何かを話しながら俺に背を向けた。


足をかけたのは明らかである。廊下に連中の笑い声が響いた。


次の瞬間、俺は叫んでいた。


SHUT UP!!!


全員足を止め、こちらに戻ってくる。ヤバい・・・。


「Why did you do that?(何であんなことすんだよ?)」


何とか知っている英語をフルに使って聞くも俺の英語を馬鹿にして再び笑うだけ。


するとリーダー格のヤツが俺にこう言った。


「Japanese guys got small ball and girls are slut, huh?」


一瞬、良く分からなかったが和訳をするとこうなる。


「日本人の男は臆病で女は売春婦なんだろ?」


small ball は男の象徴ゴールデンボールが小さいと言う意味。


つまり臆病者ということである。


slut は売春婦という意味。


別にヤツらにどう言われようと気にはならない。


だが、来る日も来る日も嫌がらせを受け、もう我慢の限界だった。


話したこともないヤツにとことんコケにされ、俺の怒りは頂点に達した。



FUCK YOU!!!


キレた俺はこう叫んでいた。


知っている英語のフレーズの中で最も悪い言葉。


すると次の瞬間、俺は吹っ飛んでいた。


あれ?俺の首、1回転しちゃった?


頭がもげるほどの衝撃で吹っ飛んでいた。殴られたのだ。


さらに間髪入れずにマウントポジションで殴ってくる。


そんなゴツい体で殴ったら俺、マジで死んじゃうじゃん・・・。


やられるだけやられて引き下がったらなおさらバカにされてしまう。


今こそ大和魂を見せつけなくては!


アメリカに来て、初めて柔道が役に立った。


寝技の要領で体勢を崩し、マウントは逆になった。


こうなればこっちのもの。


ひたすら顔面めがけて拳を振り下ろす。


左手で髪を床に押さえつけ、ひたすら右手で殴る、殴る、ブン殴る。


焦ったヤツの仲間が止めに入った。


ヤツの歯は3本折れ、泣きじゃくっていた。


もうアドレナリン出まくりで興奮状態。


俺も口の中を切っていたが痛みなんて感じなかった。


ただただ床に突っ伏して泣きじゃくるヤツを見下していた。



もう何て言うか、危機一髪で大逆転勝利って感じ?




FUCKIN' JAP ぐらい分かるよ、バカヤロウ!って感じ?


さて、週明けになってケンカを知った俺の友達が飛んできて俺を叱った。


アメリカでは殴り合いのケンカをした場合、停学になるらしい。



えっ!?


高校に編入して、1ヶ月でいきなり停学?


仮にも俺は留学生だぞ!


マズい・・・。非常にマズい・・・。


ところがどっこい、ケンカのことは公にならなかった。


理由は簡単。誰も先生にチクらなかったから。


今まで散々バカにしていた日本人にボッコボコにやられたとは言えなかったようだ。


みんなには「自転車でコケた」と言っていたらしい。



いい気味ですよ、エリック君!



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ELKHART での事件4







この地獄のような家でこき使われて身も心もボロボロ・・・。


最近は殺意も芽生えはじめました。


そんな生活の中で俺が唯一笑顔になれたのは悲しいことにパソコンの前。


友達からのメールを読むのが家にいる時の唯一の楽しみだった。


俺は日本から自分のノートパソコンを持って行っていた。


ホストファザーはほとんど話したことがない。家にいるのかどうかも分からない。


帰ってきてもリビングに顔を出さずに部屋に入ってしまう。


なぜ留学生を受け入れようとしたか全くの謎である。


ホストマザーはこき使ってくるのであまり近寄りたくなかった。


あ〜!お手伝いさんとして使うためだったのか!



・・・・・・・。


マジでいい加減にしろよ!


ホストシスターはいつも2人でおままごとや人形遊びをしている。


話も合わない、どこにも行かない、この状況の中で唯一の話し相手がホストブラザー。


前に話したとおり、パソコンオタクのホストブラザー。


彼の隣に座り、色々な話をしながらメールをするのが日課になっていた。


ホストブラザーはもう20代後半だがアラスカ州の大学生。


今は夏休み中ということで実家に帰ってきているのだ。


大学で日本語の授業を取っているらしく、日本に興味を持っていた。


話題はもっぱら日本のことや音楽のこと。


ホストブラザーは音楽ファイルやプロモーションビデオをダウンロードしたり、


友達とチャットして、腹が減ると冷凍食品をチンして食べる。


延々とこの繰り返し。



もう最強の廃人だよ、この人・・・。


その日、俺はいつものように宿題を済ませ1階に下りてきた。


嬉しいことにホストマザーはまだ仕事から帰ってきていない。


ホストブラザーの隣に座り、パソコンの電源を入れた。


今日はホストブラザーに教えてもらったサイトから音楽をダウンロードした。


テレビで流れていた最新の曲だ。


ヘヴィなサウンドに酔いしれていた。


ドゥン ドゥン ダンダン ドゥンドゥン ダンダン ダン


ドゥン ドゥン ダンダン ドゥンドゥン ダンダン ダン


ドゥン ドゥン ダンダン ドゥンドゥ
ぶりりりりぃ・・・



「オー、スミマセーン!」


オー、スミマセーンじゃねーよっ!


微妙に日本語じゃねーか。


せっかくヘヴィなサウンドに酔いしれていたのに、


凄まじい屁ヴィなスメルに酔ってしまった。


すぐに窓を開け、新鮮な空気を入れリフレッシュ。


気を取り直して再び音楽に聴き入った。


しばらくするとホストブラザーが歓喜の声を上げた。


どうやらずっと探していたプロモをダウンロードしたらしい。


ホストブラザーの後ろに立ち、一緒にプロモを見ていた。


その時だった・・・。


凄まじい音と共に玄関のドアが開いた。


あまりの大きな音にビクッと飛び跳ねたほどだ。


ホストブラザーの友達だろうか?


黒人の友達はみんなノックもせずにいきなり家に入ってくる。


ドアに目を向けるとそこには1人の中年の男が立っていた。



手に銃を持って・・・。



え・・・?なにこれ・・・?




Freeze!!!(動くな!)


その男が声を張り上げる。


ホストブラザーはすぐさま手を上げた。


俺はいきなりの事態にパニックに陥った。


言われたら危険な言葉の1つとして FREEZE は留学前から知っていた。


ところがパニックに陥って体は言うことを聞かない。


1歩、2歩と後ずさりしていた。


すると後方からも「Freeze!!!」と叫ばれ、心臓が一瞬止まる。


振り返るともう1人銃を構えた男が勝手口から入ってきていた。


銃を持った男2人に囲まれて絶体絶命。


2つの銃口は手を上げずにテンパっている俺の方を向いている。


ダメだ、俺は撃ち殺される・・・。


すると玄関から入ってきた男が口を開いた。


「Put your hands up!!!(手を挙げろ!)」


多分、こんなことを言っていたのだろう。


もうパニック状態の俺には全く聞こえない。


TAK!!!!!


ホストブラザーが俺の名前を叫び、手を取り、上に挙げさせた。


我に返り、必死に状況を飲み込もうとする。


俺とホストブラザーを挟み込むように銃を持った2人の男が立っている。


銃を構え、いつでも発砲できるような状態だ。


じりじりと警戒しながら近づいてくる。


ヤバい・・・殺される・・・。


1人が何かを言っているが心臓がバクンバクンいってなかなか聞き取れない。


かろうじて聞き取れたのは POLICE という単語。


だからと言って安心はできない。


ホンモノの警察かどうかも分からない。


それにホンモノだとしてもアメリカの警察はすぐに発砲するのだ。


昔、高速道路でスピードオーバーで止められた男がいた。


その男は免許証を見せようと背広の内ポケットに手を入れた、その時・・・


警官が発砲。男性はもちろん即死。


男性の内ポケットには拳銃ではなく免許証が入っていた。


裁判になったが怪しい行動をとった男性が悪いと警察側の勝訴に終わった。


このように怪しい行動をとれば、即発砲されるのだ。


今回、手を挙げずに動いた俺が撃たれなかったのは運がよかった。


日本の警察の制服しか知らない俺は警察だとは思えなかった。


さらに人相も悪いので強盗犯か何かだと思い、殺されると思った。


しかし、もし本当に警察ならばウチに一体何の用だろうか。


目の前にいた男は俺に銃口を向けている。後ろにいた男はホストブラザーに。


男の1人がホストブラザーに何やら説明しているが当然の如く耳に入らない。


ヒザがガクガクと震え、汗が垂れる。


俺達2人は壁に手をつかされた。


1人は銃を構えたまま、もう1人がボディチェックをする。


凶器らしきものは当然持っていない。


ボディチェックが終わるとすかさず手錠を取り出し、ホストブラザーにかけた。


そのまま車へ乗せられ連行されてしまった。


車はパトカーだった。どうやらホンモノの警察官だったようだ。


ホストブラザーが逮捕されてしまった。


突然の出来事に未だに状況を飲み込めず立ち尽くす。


家には俺1人のみ。


すぐに家中のカギを閉め、1人ホストマザーの帰りを待った。


後日、ホストマザーと警察署へ赴いた。


ホストマザーが色々説明を受けるももちろん理解できない。


帰り道に車の中で説明を受ける。


なんと・・・


逮捕の理由はレイプらしい。



俺の兄貴はレイプ犯!


おいおい、AY●SA、どうしてくれんだよ!


テメーら、一体どんな基準でホストファミリーを選んでんだよ!?


レイプ犯のいる家に留学生を派遣。


当然ながら謝罪の1つもありませんでしたがね。


もう AY●SA には呆れるばかり。


仮にもレイプ犯はホストブラザーとは言え、俺の兄貴だぞ。


もし俺のケツも被害に遭っていたら、


間違いなく AY●SA を潰しに行っていたでしょうね。



さて、ホストブラザーの今後はどうなるのだろうか。


今は無料で鉄格子のシンプルなお部屋に住んでいるみたいですよ。


さて詳しく彼の逮捕理由を聞いてみましょう。


先ほど述べたように彼は20代後半の無職。


アラスカ州の大学に通う大学生なんです。


もちろん彼は未婚です。


けれども3人の子供がいます。


その3人の子供は当然ながら母親と住んでいるのです。




アラスカ州、ミネソタ州、インディアナ州で。


3人もの女性の間に3人の子供!?


おいおい全米で撒き散らしすぎだろ・・・。


本人曰く、全員合意の上だと言う。


同意だろうが何だろうが彼は3人の父親。


当然のことながら養育費なるものを支払わなければならない。


ところが彼は無職。朝から晩までパソコンにつきっきり。


支払えるはずもない。


アメリカの法律のことは良く分からないが、もちろん違法。


今回のような場合、これは責任を取っていないためにレイプと見なされるらしい。


まぁ、説明を受けた当時の俺の英語力での解釈だから100%確実とは言えないが。


どっちにしろ警官が来て、逮捕していったのだ。


突然2人もの人間に銃を向けられたのはもちろん生まれて初めて。


トラウマになりかけたこんな経験はもうこりごり・・・。


ピストルは苦手です。



ピストンは得意なんだけどなぁ・・・。えへへ。(←遠い目で)



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ELKHART での事件5







*注意:グロい内容なので苦手な人は読まないで下さい。


おいおい・・・。今日も辛いよ・・・。


毎日毎日宿題が多くて睡眠時間は平均3時間ほど。


自分で決めたことだから最後までやり抜きます!


それにしても眠い。本当に眠い。


5秒待ってくれ、5秒でいい!


夢の中で美女とウハウハする自信ありだ!


目の下にも真っ黒のくまができてしまった。


5分、10分という時間がとても惜しい。少しでも寝たい。


1日7つの授業。毎日同じ授業の繰り返し。


全ての授業が毎日進むからついていくのに大変。


全授業で宿題が出るとそれこそ地獄。


家に帰ると徹夜覚悟ですぐに宿題に取りかかる。


が!


今日は宿題がない。7つのクラスで宿題がない。


ルンルンで家に帰って、すぐに寝ようと部屋に入った。


ところがすぐにホストファミリーに呼ばれて1階へ。


「風呂とトイレを掃除しろ」と言っている。


前にも話した通り、俺は奴隷の如く使われている。


使ってもいない風呂やトイレまで掃除させられる。


ホストマザーに掃除用具を渡されて、一言。


「ちゃんとキレイにしてよ」




お前の心もな!


その後も犬のエサやり、糞の掃除、リビングの掃除、皿洗い、その他もろもろ。


結局終わったのは午後9時。


俺にもう少し自由な時間をくれ!


アメリカは自由の国じゃないのか!?


毎日宿題をやっていたから少しずつしかやらせなかったのだろう。


少しずつと言っても皿洗いや犬の世話などかなりの量があったが。


そして今日、俺が宿題がないことをいいことに・・・


溜めていた家事を今日全てやらせたのだ!


チクショウ!ネムイヨォ!


午後9時半、ようやく就寝。



ちょうどウトウトしてきた時のことだった。


1番気持ちのいい時だ。


俺は起こされた。




ゴキブリに


何なんだよ、この家!


家族構成は、


恐怖の使用人、ホストマザー


全てに無関心、ホストファザー


今は牢屋のパソコンフリーク、ホストブラザー


この家では普通な方、ホストシスター2人



さらに・・・



ネズミが数匹




ゴキブリが無数



寝ていた俺の上をゴキブリが這ってきたのだ!


もう精神的に苦痛で苦痛で・・・。


次の日も学校から帰ってきてすぐ宿題に取りかかった。


宿題は1つだけだったので2時間ほどで終わった。


頃合を見計らっていたホストマザーが俺を呼んだ。


まただ・・・。


荷物を運べと言っている。


仕方なくついて行き、言われた通り荷物を運ぶ。


さらに冷蔵庫を覗いたホストマザーが再び俺を呼んだ。


今度は地下室から飲み物を持って来いと言っている。


おいおい、身の回りのことを全てやらせる気か?


仕方なく地下室へ続くドアを開けた。


ここの地下室はドラクエ級です。


裸電球が1つ。


階段は木の板でできています。


壁が土のままの所だってあります。


臭いもカビ臭くて、クモの巣だらけです。


壁が土なので色んな所から色んな虫たちが出てきます。



ドアを開けるとカビ臭い臭いが漂う。


ギシギシときしむ階段を下りていく。


何か臭いぞ。生々しくて腐ったような臭い。


とうとうカビの臭いもここまで達したか・・・。


そう思いながら裸電球をつけた。


と、その時!




目の前に黒くうごめく物体が・・・。


電気に反応した黒い物体は四方八方に散らばった。


黒い物体の正体はゴキブリだった。


数十匹のゴキブリが物凄い勢いで散る。




あんな大量のゴキブリに囲まれたのは初めてだ。


数匹が足の上を通っていく。


そこに残ったのは1匹のネズミ。


死んだネズミにゴキブリがたかっていたのだ。


あばらの骨を剥き出しにされ、喰われていた。


その腐敗した臭いと凄まじい光景に圧倒された。


ゴキブリの数、無惨なネズミの死骸。


体中に鳥肌が立ち、その臭いで何かがこみ上げてくる。


吐き気を抑えつつ階段を駆け上がりトイレへ駆け込んだ。


ホストマザーは不思議そうに地下室を覗いて俺にこう言った。


あれ、片付けといてね



おい、そこまで俺にやらせるのか?


袋を1枚だけ渡されて俺は立ち尽くした。


手袋や掃除用具は一切なし。


どうせ掃除用具を貸せと言っても無駄だろう。


最近は諦めというものを覚えた。


袋に手を突っ込み、大きく息を吸って、地下へ向かった。


再び数匹のゴキブリが集まっていた。


この薄暗い地下室には少なくとも数十匹のゴキブリがいるのだ。


近づくと再び逃げていった。


再び込み上げてくる吐き気を何とか抑える。


俺は袋に手を入れたまま、恐る恐るネズミに手を伸ばした。



ビニール越しに伝わってくる柔らかく冷たい感触、ゴキブリに喰われ剥き出しになったあばら骨や内臓、腐敗した生の肉の臭い、それを掴み、持ち上げた時のことである。あらわになったあばら骨の間から中に残っていたゴキブリが出てきたのだ。体中の毛が逆立ち、全身に鳥肌が立った。必死に抑えていた吐き気は我慢の限界を超えた。



ビニールを投げ出し、再びトイレに駆け込んだ。


一段落ついてから再び地下室へ。


ビニールをすばやく縛り、ゴミ箱へ放った。


こんなことばかりが続き、俺は心身ともに疲れた。


もう、こんな家、一刻も早く出たい。


このファミリーとの生活はすでに限界を超えていた。



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MINNEAPOLIS での事件







10月の初旬。初めてのホストファミリーチェンジ。


アメリカに来てから波乱万丈すぎの生活です。


ホストチェンジできるのはマジでうれしい!


だがプログラムから外されるのは納得いかない。


しかし、いくら AY●SA に言っても聞く耳持たず。


というわけで俺は今日、San Diego(サンディエゴ)に向けて飛び立つわけです。


まずは家から South-Bend(サウスベンド)に向かう。


そこから飛行機で Chicago(シカゴ)に飛ぶのだ。


空港でホストファミリーにお別れを告げる。


「ホストファミリーはまたここに戻ってきなさい」と俺の頭をなでた。


俺は心の底から「イヤです」と思いつつ、口からは笑顔で「Thank you」


さすがは本音と建前をうまく使い分ける日本人。


さて、すぐに飛行機に乗り込ん・・・



って、おい、待て!



なんと9人乗りです・・・。


おい、これ本当に飛べるのか?


誰かが趣味で作ったようなオンボロ飛行機。


South-Bend から飛び立って10分。


飛行機は雲の上スレスレの所を飛行中。


早くも風に流されております。


カナダに着いちゃいそうな勢いです。


あの米中枢同時多発テロからわずか1ヶ月。


俺はテロを心配していたがそんなことしなくても落ちそうだ。


機内はやはり狭い。


でも機内サービスは9人だから超充実。


ジュースを出されるも飛行機が風で傾いてこぼれる、こぼれる。


もう朝食を反芻(はんすう)する直前で Chicago に到着。


ベンチで少し休憩して再度消化。


乗り継ぎの搭乗口に移動。荷物が多くて大変だ。


大きなスーツと中古で買った小さなスーツケース。


さらには大きなスポーツバッグが1つ。


ひぃひぃ言いながらベンチに腰を下ろした。


次は Chicago から Minnesota(ミネソタ)へ飛ぶ。


と、そこへアナウンスが流れた。


なんと、パイロットがいないらしい・・・。


テロを恐れて逃げたのだろうか・・・。


とりあえず臨時便が出るまで待つことに。


待てども待てども飛行機は飛ばず。


昼飯も食わずに持っていた水とアメで我慢。


さらに待つ。ただただ待つ。ひたすら待つ。


時間を持て余していたために本を読むことに。


日本から持ってきた唯一の本、それはセイン・カミュの本だ。


これはかなり参考になった。俺のお気に入りの1冊だ。


しばらく読み進めていると隣に座っていたお姉さんが話しかけてきた。


日本語の本が珍しかったのだろうか?


本を覗き込んで漢字の複雑さにビックリしていた。


日本からの留学生だというと妙に感心していた。


さらに待ち続け、すでに9時間が経った。


ようやく飛行機が飛ぶ。


今度は大きなジャンボ機だ。


風に流される心配はないが、テロが心配。


できることなら乗りたくないが、仕方がない。


座席を探し、座った。ようやくくつろげる。


すると通路をさっきのお姉さんが歩いてきた。


なんと隣の席の人だった。


なんたる偶然。


ってことは、この人、もう俺にゾッコンだな?



すいません、調子乗りすぎました・・・。


しばらくしてアナウンスが流れた。


座席に座ってシートベルトをしてくださいとの指示だ。


ところが周りを見てもほとんど人がいない。


ジャンボ機なのに人が少ない、いや、だから少ないのか。


出発する時間になっても誰も乗ってこない。


とうとう走り出してしまった。


そして離陸。


小さくなっていく Chicago の町並みをよそに高度を上げていく。


シートベルト着用のランプが消えた。


俺はトイレに行こうと席を立って愕然とした。


人がじぇんじぇんいましぇん・・・。(焦)



ジャンボ機だろ、おい!



見える範囲にたった4人。


オーマイガッ・・・


もうテロを恐れて席で祈りまくり。


その後、祈りつかれた俺は寝ることに。


飛行機の座席をいくつも使って横たわる。


なんとも贅沢な寝方である。


横になった瞬間、まさか最後の贅沢?と思いつつ就寝。


俺は気持ちよく眠っていた。


ところが、次の瞬間、すごい衝撃を受けて目を覚ます。


何かが耳に入ってきた。


寝ぼけ眼で耳を触るとなんと濡れている・・・。


まさに「寝耳に水」で起こされた。


急な出来事に自体を飲み込めず、戸惑う俺。


三途の川に着いたのかと思ったが何のことはない。


搭乗員がお姉さんに水を渡そうとしてこぼしたのだ。


ジュースじゃなくてよかった・・・。


テロの恐怖をよそに飛行機は Minneapolis(ミネアポリス)空港に着陸。


時刻はすでに12時をまわっている。


本来ならここから乗り継いで San Diego に行くはずだったが・・・。


当然、すでに飛び立っていてもう飛行機は残っていない。


おいおい、どうすんだよ、俺。


とりあえずホテルにでも泊まって明日出直そう。


新しいホストファミリーにも連絡をしなくては。


公衆電話から CR の Lin●a Tunks(仮名)に電話をかけた。


出発前に新しいホストファミリーのことを何1つ聞かされていない。


とことんいい加減な留学団体である。


名前と電話番号ぐらい教えておくのが普通であろう。


Lin●a Tunks(仮名)に事情を話したがふざけた答えが帰ってきた。


自分達も知らないらしい。もうお前ら、○ね!って感じだ。


せめて今晩の泊まる場所を手配するよう求めた。


空港で寝ろ


もう呆れて何も言えなかった。


結局何にもしてくれなかったのだ。


すぐさま日本に電話。親からホストファミリーの連絡先を聞いた。


俺が何も知らされていないこと、空港に泊まることを聞いて心配していた。


すでに時刻は1時。今から電話するのは遅すぎるためやめた。


明日の朝早くに電話しよう。


電気もほとんど消えた空港をスーツケースやバッグを持って移動。


とりあえずベンチに荷物をおろしてストレッチ。


パスポートなどの貴重品もあるので寝るわけにはいかない。


寝ている間にスリにあったり、襲われたらひとたまりもない。


今日は朝からほとんど食べていない。いい加減腹ペコだ。


近くの自販機でスナックを買って何とか空腹をしのいだ。


今までの一連の出来事で十分事件なのだが、さらなる事件が俺を襲った。


それは草木も眠る丑三つ時。


少し眠くなってきて姿勢をただし大きく伸びる。


と、その時、背後からいきなり肩をつかまれ飛び上がった。


振り返るとそこにはメキシカン系の小汚い格好をした男。


ベンチの前に回ってきて俺の前に立った。



この男、チ●コ勃ってる・・・。



そしてこう言ってきた。


「Give me pot... give me... pot... pot...」


な、なんだよ、この男・・・。



和訳すると・・・


「マリファナくれぇ・・・マリファナァ・・・」


う・・・またヤバいヤツに絡まれたよ・・・。


下手したら銃出してきてバンッ!かもしれない・・・。


取りあえずどうにかしなくては・・・。


目がいっちゃってるからもう吸った後だろう。


持っていないと伝えるがやはり伝わらない。


もう完全に飛んじゃってるよ・・・。


すぐにパスポートと財布だけ持ってその場からダッシュ。


この際、荷物がどうなっても命の方が大切だ。


本気でダッシュ。


一刻も早くその男から遠ざかりたかった。


振り返ることもせずにひたすら走りまくった。


ただ、撃たれた時のために蛇行してましたがね。


ま、こんなんでよけられれば苦労もないが。


ところがこのマリファナ中毒野郎は荷物に見向きもしない。


「マリファナ持ってないのかぁ?」と一直線に俺を追ってきた。


チ●コも勃ったまま。




ガッデームッ!



足では当然余裕で勝てる。なんせ向こうはラリってるし。


ところが向こうは武器を所持しているかもしれない。


ピストルを持っていたら距離なんて関係ない。


撃たれたら終わりだ。



下半身のピストンピストルで撃たれたら、

色んな意味で終わりだ。



最悪の事態だけは回避しなくては。


さぁ、立ち向かえ!国家権力よ!


俺は空港内のポリスステーションに駆け込み助けを呼んだ。


出てきたのは超マッチョの黒人2人。


2人とも迷彩服をまとい、腕にはライフルが。


よっしゃ!勝った!


ザーボンさん、ドドリアさん、やっておしまいなさい!


そして無事、男は連行されていった。


すると片方の男がライフルを手に戻ってきた。


「Are you alright?」


日本語に訳すと・・・


「フリーザ様、始末いたしました」


ってとこですかね。


すかさず俺も返事を返す。


「Yea, Thank you」


日本語に訳すと・・・


「よくやりましたね、ザーボンさん、ドドリアさん」


ってとこです。



ホストチェンジの時までネタまみれなんて・・・。


頼むぜ、ジーザス・・・。


その後は特に大きなネタもなく過ごせた。


ポリスステーションの横のベンチで。


しばらくするとおじさんが来て、向かいのベンチに座った。


貴様も俺の命(たま)を狙ってるのか?



どっちの「たま」もやらねぇぞ!


と、思ったら普通の人でした。


少し警戒しつつ話し続け朝を迎えた。


朝、8時!


さっそく San Diego 行きの航空券を買いに行った。


窓口で1番早くに飛ぶ航空券を購入。


「$○○○になります」


えぇぇぇぇ〜っ!?


か、金がかかるんですか?


当然ながらそんな大金はない。せいぜい$20しかない。


ヤバい、ヤバいよ・・・。


このままじゃどこにも行けないよ・・・。


これから毎晩マリファナ中毒勃起野郎に追われるのはゴメンだ。


必死に抗議開始。


要はタダで航空券をよこせって話で。


無謀すぎですね。まぁ、俺も必死でしたから。


抗議を始めて早10分が過ぎました。


お互い一歩も譲らぬ攻防で、とうとう上のお方が出てきた。


すると意外や意外、いきなり謝りだしたのだ。


そして俺が飛ぶはずだった飛行機の航空券を見て、どこかに電話。


シカゴからの飛行機が飛ばなかったことを確かめると航空券をタダでくれた。


ようやく俺のVIPさに気付いたようだ。


あ、そうそう、VIPって知ってるよね?


Vagabond Intoxication Pervert じゃないからね。


日本語にすると「放浪中毒変態野郎」だからね。


VIPは Very Important Person だからね。


ようやく航空券を手に入れた俺はすぐさま電話。


新しいホストマザーが電話に出た。


昨日行けなかったことと連絡できなかった事情を説明し謝る。


全然気にしていない様子で安心した。


ホストファミリー1つ変えるのにもネタだらけ。


ようやく飛行機に乗り込み、今回の事件は幕を閉じた。



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SAN DIEGO での事件







新しい学校にも慣れ、友達もできてきた。


気付けば San Diego に来て1ヶ月ほどたっていた。


11月だというのに昼間はシャツ1枚でも暑いくらいだった。


前にも話したとおり、俺とえつこのホストファミリーは親戚。


それで、バス停で待ち合わせして一緒に学校に行きなさいと言われていた。


ところが、バスはなかなか来ない。


1年中半袖で過ごせるもののさすがに朝夕は少し寒い。


そんな中、お互いを待つのはきつい。


だからお互い待たないでそれぞれ行こうと2人で決めていた。


家からバス停まで歩いて10分ぐらい。


そこからバスに揺られて1時間ぐらいでダウンタウンに着く。


そこからさらに歩いて10分弱で学校に到着。


その日、俺は少し寝坊をしてしまった。


この家庭は基本的に放任主義。


自分の子供たちには放任主義ではないが・・・。


だって毎晩7時には眠らされてるし。


さて、急いで着替えてカバンを掴み家を飛び出した。


Limp Bizkit を MD で聴きながらバス停までダッシュ。


大きな道路が交わる所にバス停がある。


向こうにはもうバスが見えている。


青になると急いでわたり、バスになんとか間に合った。


カバンに手を突っ込むが定期がない・・・。家に忘れてしまった・・・。



がっでむ!


急いで家に戻り、定期券を取ってまたバス停までダッシュ。


もう8時になってしまった。


信号を渡り、バスの時刻表を覗き込む。


次に来るナンバー50のバスは・・・30分後!


ぐ・・・これじゃ間に合わん・・・。


すぐにカバンの中に手をつっこむ。


俺はサンディエゴ中のバスの時刻表を持っている。


時刻表と言ってもどのバス停を通って、何に接続して、


と言った感じに全てを網羅している。


今回俺が取り出したのはここの近くのバス停のナンバー5のバス。


歩いて3分ほどのところにもバス停がある。


そこには5分後にバスが来るらしい。


すぐさま時計を見て逆算。


そのバス停からバスでオールドタウンという停留所へ行き、


そこからトロリーでダウンタウンへ行く。


そうすればギリギリで学校に間に合う。


すぐさまそのバス停に向かって歩き出した。


ちょうどタイミングよくバスが来た。


サンディエゴにもバス定期券があり、


それがあればサンディエゴ中のバス、トロリーは乗り放題。


30分ほどしてオールドタウンに着いた。


サンディエゴの中では結構知名度が高いが何もない。


本当に何もない。


バス停がいくつかとトロリー乗り場があるだけ。


オールドタウンで降りると待っていた真っ赤なトロリーに乗り込んだ。


トロリーはオレンジラインとブルーラインがあり、


アメリカプラザまで同じで、そこからダウンタウン方面とメキシコ方面に分かれる。


俺はオレンジラインでダウンタウンまで行けばいいのだ。


トロリーの心地よい揺れ具合でいつしか眠っていた。


俺は席に座ったままダウンタウンを目指した。



ブルーラインに乗って・・・。


さて、間違いに気付かない俺はアメリカ・プラザに着いた。


ここからオレンジラインはダウンタウン方面へ、


ブルーラインはメキシコ方面へ向かう。


しばらくしてふと目が覚めた。


見慣れない風景に眠気が吹っ飛ぶ。


着いた駅で降りて、すぐに反対側のホームへ。


はぁ・・・完全に遅刻だ・・・。


普通にバスで行った方が早かった。


「急がば回れ」とはよく言ったものだな・・・。


でも別に遅刻しただけでは大した事件ではない。


今回の事件はここからがすごかった。


朝から災難続きだが、こんな時は災難が続くもの。


もう太陽も照り始め、青い空が広がった。


ポカポカと暖かく、のんびりした気分になる。


まだ当分はトロリーが来ない。


ベンチもないし、地面に腰を下ろして待つことにした。


時刻は朝の9時。授業は15分後に始まってしまう。


空気も澄んでいて気持ちいいが少しイライラしていた。


ヘッドホンのボリュームを上げ、大声で歌った。


小さなこの駅には乗る人もいなければ駅員もいない。


この小さな駅に俺1人。


数分すると向こうに人影が見えた。


ホームレスが荷物を載せたカートを押して歩いていた。


ゆっくりゆっくりこっちに向かってくる。


時間もゆっくり流れてるような気がした。


そして俺の後ろをゆっくりと通り過ぎた。


その時、カートが俺のカバンにぶつかった。


駅は小さいとはいえ、ぶつかるほど狭くないだろ・・・。


次の瞬間、目の前に何かが出てきて俺は吹っ飛ばされて倒れていた。



血だらけで。


なぜ!?



いきなりホームレスが持っていた杖でフルスイング。


それが俺の顔面にクリーンヒットしたのだ。


しかも倒れた俺をゴルフボールと勘違いしたのだろうか、


第2打という感じで再びタイガーウッズ並みのフルスイング。


もう1発喰らったらひとたまりもない。


「うぅ〜」と千鳥足でもたついている。



俺は歯がグラグラだ・・・。目一杯グラグラだ。


貴様、この俺様に土をつけやがったな。


その後も3mも4mも離れてるのに杖でフルスイング。


空振りしてるが当たったらマジでヤバい。


軽快なフットワークでかわしホームレスとの距離を縮める。


鼻血をたらしながら。


大和魂を見せてやろう!


えい!やぁ!とう!


これが大和魂だ!


幸い、ホームレスだったので恐怖感はなかった。


とりあえずシバいてやりました。


ホームレスはヨロヨロと立ち上がって杖を拾った。


すると「待ってろ」と言い残していなくなった。


こりゃ、ヤバいな・・・。


銃を持ってきたり、仲間を呼んで来られたらひとたまりもない。


さすがに待つのはヤバいと思い逃げることにした。


線路に出てそのまま隣の駅までダッシュ。



トロリーより早く走った自信ありだ。


走って血のめぐりがよくなり出血量が増す。


口の中は血だらけだ。



線路の上を血を噴き出しながら走る日本人。


明らかに怪しいだろ、おい。


隣の駅でトロリーに乗ってからも血は衰えることなく出てくる。


ようやくダウンタウンに着いた。


ここから学校まではもう少しだ。


口から血を流しシャツも血まみれの俺に視線が集中。


気分はまさにヒーロー。


向かい来る敵を倒し、ただいま帰還。


まさにそんな気分だ。


だいぶ遅刻して学校に着いた。


仮にもこのビルはワールドトレードセンター。


人に見られるのはさすがにヤバい。


受付の前を不自然に横を向いて通過。


何とかエレベーターに乗り込んだ。


ところがエレベーターの前はすぐに受付。ヤバい・・・。


セーフ!


誰もいません。


すぐに教室に向かった。


ガチャ


ドアを開けるとみんなの視線が俺に集中した。


それを見た先生の Sue Ann(スー・アン)が驚いて飛んできた。


ホームレスに襲われたと事情を話すともう真っ青。


すぐに警察に電話しようと言い出したからビックリ。


ちょっと待ってくれ!



100倍返しにしちゃったんだよ・・・。


その旨を話すと Sue Ann はさらに真っ青に。


その後、俺はたっぷりとお叱りを受けました。


銃を持っていたらどうするの?などなど・・・。


俺はやられたんですけどね・・・。


もうホームレスにはこりごりです。


結局、傷は杖で殴られて口の中が切れただけでした。


かなり深かったけど・・・。


ホストファミリーにはサッカーで顔面直撃したと説明。


何とか事なきを得ました。


学校に行くだけでネタまみれ。


ジーザス、どうにかしてくれ・・・。




P.S. 知ってますか?杖は英語で stick です。


stick には「突っ込む」「突き刺す」って意味もあるんです。


いや〜、ホームレスが後ろを通った時に、


stick で stick されなくてよかった。


後ろからいきなり突っ込まれてたら、


俺はトロリーの線路を進行方向と逆に全力疾走してます。




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SAN DIEGO での事件2







ホームレスに襲われた3日後のことだった。


たった3日で次の事件が起きるなんて・・・。


俺のネタとの遭遇率の高さに自分でもビックリだ。


俺は裕司と古着屋に行くことにした。


シャツなど$1からあり、質もなかなからしい。


金のない俺にはもってこいの店だ。


古着屋に行くのは初めてだった。


その店は San Diego の隣町の Hillcrest(ヒルクレスト)にある。



実はゲイタウンなんです・・・。


Hillcrest で軽く何か食おうかと話していると着いてしまった。


着いてまずビックリ。


町に男しかいません。


みんな手をつないでいます。



カフェでカップに2本ストローさしてます。




ディープキスしてる男もいます。





なんだかもうおなかいっぱいだ・・・。


アメリカで虹色の旗を掲げる店があったら注意だ。


それはゲイの店だという意味である。


ここのストリート、右も左も虹の旗ばかり DEATH・・・。


どの店にも虹色の旗、もしくはステッカーが貼ってあります。


普通の店を探すのはどうやら不可能だ。


道行く人もみんな舐め回すように見てくる。


アジアンのは締まりがよさそうだみたいな目で。



「ホモに非ずは人に非ず」


そんな町です。


女の子が夜中に1人で歩いても安全だというのが分かる。


早くも心が折れそうです。


Bryan(ブライアン)という学校の先生に教えてもらった店を探す。


「お、意外とまともそうじゃん」


軽い気持ちで入店したのが間違いだった。


おいおい、店員さんの髪の毛ピンク色だよ・・・。


どうしよう、どうしよう・・・後戻りできない。


「Hi, baby! What are you looking for?」



ベ、ベイベェー・・・!?


俺、もうダメだ・・・。


「What are you looking for, baby?(何探してるの、ベイビー?)」


間髪入れずに攻め込んできやがった。


ジ、ジ、ジ、ジ、ジーンズっす・・・。


一応それなりにちゃんと探してくれた。


が!


やっぱりタダじゃ済まなかった。


試着してみろと俺のズボンのチャックに手をかけた。



ダメだ、死んでもダメだ!


すぐさま自分でできると飛びのいた。


残念そうなピンクの髪の店員をよそに試着室へ。


このジーンズの他にもシャツを数枚買った。


そして再び裕司と共に家路についた。


バスを待っている俺らの前を手をつないだ男共が通過する。


見慣れてしまった自分がすごくイヤだ。


しばらくしてバスが来た。


颯爽と乗り込みバスの中を見てビックリ。



男しかいない。


みんな手をつないでいる。



後ろの席にはキスしてるヤツも。



向こうから見れば俺らもホモだと思うだろう。


バスはホモ数十名と俺ら2人を乗せて走り出した。


裕司と話すと日本語が珍しいのか何人も振り返っている。



ママ、怖いよぉ・・・。


とりあえず裕司の隣に座った。


隣の席を空けておいて誰かが座ってきたらひとたまりもない。


ダウンタウンですぐにバスを降り、ナンバー50に乗り換える。


何とか無事に家に着いた。


ものすごいカルチャーショックだ。


アメリカの物のでかさより、


男女がすごいオープンなのより、




何よりゲイタウンがカルチャーショックだ。


そして、次の日、興奮冷めやらぬまま学校へ。


裕司と昨日の話題で盛り上がる。


そして、その放課後、みんなでサッカーをやることに。


場所は学校から少し離れた公園の芝生。


だだっ広いその公園はダウンタウンと Hillcrest の中間あたりだ。


特に気に留めず、サッカーに没頭した。


青い空、降り注ぐ太陽、緑の芝生、そして俺はボールを追った。


まさに青春ドラマ並みのシチュエーションだ。


その青春ドラマが崩れるのにそう時間はかからなかった。


敵チームが放ったシュートは大きく外れた。


ボールはそのまま芝生を越えていった。


近くにいた俺と数人がボールを追った。


ボールは公園内に駐車している車の中に消えた。


ボール探し、車の群れの中へと入っていった。


駐車場の車の中に1台赤い車が止まっていた。


あれ?車が揺れてるぞ・・・。


ま、まさか・・・。


車に近づいてみる。


やっぱり、あの「まさか」だ・・・。


マッチョの男2人が行為に勤しんでいた。



助手席に2人重なってシェイクしている。


強そうなスキンヘッドのマッチョが女役だ。



↑車内で愛し合う男達の図


右側はちょっと大げさだが、こんな感じだ。


怖い。本気で怖い。



ママ、僕、いけないもの見ちゃった・・・。


と、その時!


やられてる女役のスキンヘッドマッチョと目が合ってしまった。



しまった!



車の中に引き込まれたら・・・


そ、そしたら舌を噛み切ろう。




スキンヘッドマッチョは思い切りクラクションを鳴らした。


次の瞬間、俺は光よりも早く走っていた。


本能が一刻も早くその場所から離れろと告げていた。


今回の事件は俺に物理的被害はなかった。


だが精神的ダメージはそれより大きかった。


人として見てはいけないものを見てしまった。


想像してごらん。


ありえないことが今目の前で起こっている。


映画に出てきそうなマッチョマン2人組だ。


車の助手席で狭そうに愛し合っている。


車が揺れるほど激しく愛し合っている。


それを汚れを知らない17歳純情少年が見てしまった。




な?トラウマだべ?


最大級のインパクトと最大級のダメージ。


諸刃の剣のようなできごとだが、


あまりのインパクトのでかさににわかには信じてもらえないことも。


何はともあれ、


俺の両目は汚された。



ママ、目が痛いよぉ。



夢にも出てくるよぉ・・・。




ぶっちぎりで忘れたいランキング TOP 3入りだ。







P.S. この汚された両目と心を(体も)癒してくれるかわいい女の子緊急大募集!



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INDIANAPOLIS での事件







いやいやクリスマス前に Indianapolis に来て1週間ほど経った。


少しずつ新しい家族にも慣れてきた。


それでも San Diego にいる友達が恋しかった。


冬休み中だから学校もない、だから友達もできない。


両親は共働き、だからどこにも出かけない。


ホストブラザーの Mike はほとんど家にいない。


外は雪で車も運転できないから毎日家の中で過ごす。


Maria は自分の友達が迎えに来たり、遊びに来たり。


そんな時、俺は2階の狭い部屋(?)で時間を潰す。


もうこんな毎日にもうんざりしてきた。


そこで最近では雪の中歩ける範囲で色々な所に行っている。


住宅街の中で行ける所と言っても大分限られてくるが・・・。


その日、家には俺と Maria の2人だった。


一緒に話しても所詮は男と女。話題もすぐに尽き、部屋を沈黙が支配する。


気まずい・・・。


会って1週間だし、仕方もないことだろう。


昼近くになって Maria は友達が迎えに来て遊びに行った。


仕方なく今日も1人で散歩に行くことに。


今日は灯台下暗しってことで家の裏側へ回ってみた。


雪が降り始めてもう長く経っている。


もう裏庭はみんなが遊んで雪も汚いだろうなぁ・・・。


ところが家の裏は一面真っ白なキャンパスのようだった。


まだ誰の足跡もついていない一面の雪景色。


汚れのないものを見ると汚したくなるのが男の性(さが)。



・・・・・・・。


ちょ、ちょっと何だよ、その軽蔑の眼差しは!


男性諸君なら分かるだろ!?


○○とかって汚したくなるよな?な?な?


って、ことで俺は家の裏に仁王立ちしてしばし優越感を味わった。


真っ白なキレイな雪を俺だけが汚すことのできる優越感。


これからこの真っ白な雪を俺色に染めてやる。ゲヘヘ・・・。


まずは1、2の3で大ジャンプ。そのまま「大の字」で着地。


服が少し濡れたがお構いなし。雪景色に大の文字が浮かび上がった。


倒れたまま雪を貪り食って、立ち上がる。


そのまま歓喜の雄たけびを上げ、そこらを駆け回る。


俺の後ろには俺の足跡のみが残っている。


毎日つまらなく時間を過ごし、退屈していた。


新しいホストファミリーで気を遣うことももちろんあった。


俺の部屋には壁もないので常に周りの目が気になった。


叫びながら走り回りたまったストレスやうっぷんを晴らしていく。


それはそれはおかしな光景だったでしょうね。


叫び狂うアジアンが雪の上をひたすら走っている。


もうどれぐらい走っただろうか。


息も切れてきた。


よし、ラストスパートだ。行ける所まで行ってみよう。


よーい、ドン!で猛ダッシュ。


ワ―――――――――――――!


と大声を上げてバンザイの格好で走り出す。


走り出してすぐのことだった。


真っ白だった一面の雪景色が突如消えた。


え?


足を取られるような感覚だった。


砂浜で走ると足が取られるがまさにあの感じだ。


目の前に広がっていた雪景色が一瞬にして消え、焦る俺。


次の瞬間、俺は死の恐怖を味わうことになる。


俺が走り回っていたのはなんと・・・


池の上だったのだ。


この家に来た時から雪が積もっていたので池の存在など知る由もない。


常に新しい水が湧き出てるためにその部分だけ氷が薄かったのだ。


その上をバカみたいに走っていれば池に落ちるのも当然である。


雪が溶けてから分かったのだが俺が走ってたあたりは全て池の上でした。


いや〜、もう本当にビックリです。


自分のピエロっぷりに。



周りの人もさぞかしビックリだったことでしょう。


狂喜乱舞してるアジアンが池の上をバンザイで暴走。


よく通報されませんでしたね、俺。


しかも俺が落ちたのはちょうど池のど真ん中。


まずは走っている時の勢いで一気に池の中までダイブ。


一面を凍りに覆われた池の水は当然ながら氷水に等しい。


突如、日本人の少年は凍てつく氷水に襲われたのである。


急に0度近い水の中に放り出され心臓が押し潰されるような圧迫感。


本気で心臓が潰れるかと思うほど痛かった。


さらに呼吸困難に陥った。息がうまく吸えないのだ。


ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ


犬のような呼吸になってしまい、息を吸おうにもなかなか吸えない。


さらに最悪の事態に・・・。


走っていたために腕の関節も膝の関節も曲げた状態だった。


ところが氷水の中に落ちると力を込めてもそれが勝手にピンと伸びるのだ。


曲げていた腕や膝が否応なしに伸ばされる。


もがくために必死に曲げようとするがギチギチ音をたてて伸びていく。


心臓には過度の圧迫感、呼吸もできず、手足も曲がらない。


当然、泳ぐことも、もがくことすらできず、池の底へ沈んでいく。


俺は本気で死を覚悟した。


沈んですでに10秒ほどが経っただろうか。


未だに心臓は押し潰されそうな痛みに襲われている。


むやみにもがかず静かに池の底に横たわっていると変化が。


ゆっくりと体が浮き始めたのだ。


氷に閉ざされ真っ暗な池の中から水面を見つめる。


自分が開けた穴からかすかに光が差し込んでいる。


本当に少しずつ時間をかけてゆっくりゆっくり浮き上がる。


ただでさえ心臓への過度の圧迫感がすごいのに、加えて呼吸もできない。


もう息は限界に達していた。


寒さで神経が麻痺して感覚が徐々になくなりつつあった。


さらにだんだんと気も遠くなってくる。


光がだんだんと近づいてきている。あと少しだ。


ようやく顔が水面に出た。ハッハッハッと少しずつ空気を吸い込む。


寒さで麻痺した全身に力をこめて何とか危機を脱しようと試みる。


指先や足先の感覚は全くないが何とか腕と足は動かせそうだ。


体も少し氷水に慣れてきたようだ。慣れたと言っても微々たるものだが・・・。


こんな所で死んでたまるか。


アメリカに来てまでこんな死に方したらいい笑いものだ。


ホストファミリーが帰ってきたら俺の姿がない。


警察も来て懸命に俺を探すであろう。


それまでには雪もさらに降り積もっている。


俺の大の字の後は残っても足跡までは残らないだろう。


警察もビックリ、留学生が忽然と姿を消した。


裏庭に残されたのは俺の大の字のみ。


雪を掘り返すものの何も見つからない。


そしていつしか事件は迷宮入り。


新聞の見出しにも出るだろう。


「日本人留学生、裏庭に謎の文字を残し蒸発」


「残された日本語の意味はBIG」


ニュースキャスターも当然、全米に向けてこのニュースを読み上げるであろう。


「アノ日本人ハナニガBIGダト伝エタカッタノデショウカ?」


だが俺は全く見つかる気配なし。


さらに月日は流れ、みんなも忘れかけていた。


そんな春のある昼下がり、池の氷も溶け出す。


冬眠から覚めたカエルが土の中から顔を出す。


そして俺は池の中からグッモーニン!



イ、イヤすぎる・・・。


何としてでも生き延びなくては!


何とか腕を水面から出し、登ろうと試みる。


ところが腕が完全に曲げられず登れない。


腕をなるべく遠くに伸ばし、胸を陸地にあてがった。


体を浮力に任せて足を水面まで持ってくる。


何とか左足を陸地にあげる。


そのままひっくり返るが失敗。


再び体は胸から下が水に落ちる。


もう1度。今度は反対の右足を陸地に上げ、小休止。


最後の力を振り絞ってひっくり返る。


性交成功!陸地に仰向けの状態になった!


だが油断は禁物。ここもすぐに氷が割れてしまうかもしれない。


ところが立ち上がることができない。


かじかんで体の自由が利かない上に服は水を含んでいる。


とりあえずコロコロと転がりながら家の方に進む。


ようやくハイハイの体勢になったがゼェゼェと胸が苦しい。


勝手口に何とかたどり着いた。


ハイハイの体勢から何とか腕を伸ばすがドアノブに手がかからない。


指が曲がらないためにドアノブをつかめない。


ここまでたどり着いたのに・・・。


ここで名案がひらめいた。


汚い話だが指をくわえ、何度も何度もなめた。


指先を温めようと考えたのだ。


ひたすら指をしゃぶり、暖める。


女の子がやってれば多少は色っぽいかも・・・。

よくこういうシーンあるよね?


俺も生き延びるために必死だ。


だからここから下ネタに発展するという期待は捨ててくれ


かろうじて指が動くようになり、すぐにドアを開ける。


家の中に這いつくばって入った。


室温で体が温まるまで待つことに。


ところが全くもって温まる気配なし。


むしろ濡れた服にどんどん体温を奪われていった。


そうだっ!風呂だっ!


風呂で温まればいいんだ!


ところが風呂場は2階。


いつもは1段飛ばしでポンポンと行ける2階。


今日はものすごく遠く感じる。


1段1段這いつくばって登っていく。


ようやく風呂場に着いた。


浴槽のふちに這い上がり、転げ込むように横たわる。


少し感覚の戻った手で懸命に蛇口をひねった。


一気に水が浴槽に流れ込んだ。


熱い、力いっぱい熱い。


世界一熱い水を浴びた男になる自信ありだ。


間違ってお湯を入れていたら俺は茹で上がっていたかもしれない。


温度差が大きくならないように水を入れた自分に我ながら感心だ。


熱湯風呂に浸かっている感覚だが段々と体温が戻ってきた。


だが、考えてみれば水風呂に浸かっているわけである。


これじゃダメだ、もっと温めなくては!


一旦水を抜き、ぬるま湯を入れて体を温める。


ぬるま湯に浸かっているにも関わらず体は氷のように冷たい。


腕が動くようになりここで初めて服を脱いだ。


さらにぬるま湯の温度を上げていく。


死にかけた自分が徐々に息を吹き返していく。


もう1時間ぐらい経っただろうか。


顔も冷たいのでお湯にもぐって顔も温める。


気分はまさにメディカルマシーンに入っている悟空。


体を十分に温めてからようやく立ち上がることができた。


完全回復!



でも、もし、自分の凍っていたジュニアが完全回復していなかったら・・・


俺、本気で池にダイブします。


さてここからが大忙し。


証拠隠滅のために雑巾片手に駆け回る。


靴で風呂に入ったために浴槽を洗い、


濡れた階段を1段ずつ拭き、


濡れた服を洗面台で洗い、


全証拠を完全に隠滅させた。


何で死ぬ思いしたのに、こんなに必死なんだ・・・。


本来なら救急車を呼んで応急処置してもらうのが普通だろ。


こんなところでネタになってる話じゃねーよ・・・。


俺はその後、新しいホストファミリーの家に移っていった。


新しいホストファミリーはこのホストファミリーと友達。


だからその後も何度かこの家には来る機会があった。


春になって、雪は溶け、木々は緑色に活気づいた。


あの忌まわしい池も姿を現した。


家から10mぐらいのとこはもう池でした・・・。


近すぎだろ、おい。


知らなかったとは言え、今考えると恐ろしい。


俺は池の上を通過して向こう岸まで行ってたわけで・・・。


今回の件を踏まえて、俺は心に固く決心した。


もう池の上は走らないと。



もうあんなピエロにはならないぞと。



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GREENFIELD での事件







今日は4月30日です。


今日、4月30日は何の日か知ってましたか?


実は、今日、4月30日は・・・


俺が死闘を繰り広げた日です。


そりゃもうすごい試合、いや、死合でしたよ。


その日、俺は普段通りに学校に行っていた。


4時間目の生物の授業を終えて、ロッカーに向かった。


そこにはいつものように AdamKyleTomSean がいた。


今日は何して遊ぼうかと計画を練っていた。


ところが今日は Tom Sean は遊べないらしい。


結局、明日遊ぼうということでまとまった。


その後すぐに外に出ればよかったのだが・・・。


もうすぐスクールバスが来てしまう。


俺のスクールバスは来るのがみんなより早い。


ところが話に花を咲かせてしまった。


外に出るとすでに俺のスクールバスは出てしまった。



しまった!



家が近い友達を探すがすでに車で帰ってしまっていた。


家に電話して迎えに来てもらうことに・・・。


ところが両方とも今日は仕事。


さらに Martin もバイトでいない。


帰る手段は自分の足のみになってしまった。


仕方ない、歩いて帰ろう・・・。


てくてく・・・てくてく・・・てくてく・・・


なかなか着かない・・・。


学校から家まで10km以上。


そりゃ着かねーわな。


10分、20分、そして1時間と時間が過ぎていく。


道行く景色をデジカメで撮りながら歩いた。


Greenfield だけに辺り一面広大な畑などが広がっている。


ふと足を止めて、大きく深呼吸して心身ともにリフレッシュ。


土地が広いので牛や馬を放し飼いにしている家も少なくない。


柵で仕切られているものの手を伸ばせばさわれる。


足を止め、牛や馬などを見ながら歩いた。


空は青いし、空気はうまい、時間ものんびり流れている。


さっきまで急いで歩いていた自分がバカみたいだった。


だからと言ってこのままここでのんびりしているわけにもいかない。


俺は再び歩き出した。


しばらくするとあるアイデアが頭に浮かんだ。


ショートカットすればいいんだ!


畑でもない、牛や馬もいない牧草地。


私有地ではあるが、この際目をつぶってもらおう。


牧草地を直進すれば家まではあと少しだ。


俺はそう思って柵を乗り越えた。


ふかふかの牧草地の上は気持ちよかった。


しばらく歩いていくと何かが目についた。


一面の緑の中に白い物体が落ちている。




なんだろう?


近寄って確かめてみる。


何かの卵だ。


しかもかなりでかい!


持ってみると結構ずっしりときた。


しかし牛も馬も卵は産まない。


一体何の卵だろう・・・?


と、その時、俺は背後に何かの気配を感じた。


ま、まさか・・・。


いや、俺のことだから絶対その「まさか」だ。


どこのどいつだ、この親は!




↑こいつの図




ギャ―――ッ!



で、でけぇ・・・。


ダチョウってこんなにでかいのか!


す、す、す、す、すいません!卵はお返しします!


俺はそっと卵を置いた。


きっと俺が卵を奪って食うとでも思ったのだろう。


絶対怒ってるよな・・・。


一歩一歩ゆっくりと後ずさり。


えへへ、日本人なもんで・・・。


何も知らなかったんすよ、はい・・・。


いや、もうすぐ消えるんで!


怖い、怖いよ。こいつ、怖い!



何か首を上下にすげー振ってるよ。



と、その時!


バサッ!



↑威嚇の図




ギャ―――ッ!(泣)


もう一目散にダッシュ!


返したのに何で追ってくるんだ!


しかもめちゃくちゃ早ぇ!


羽を広げながら一直線に向かってくる!


ぐんぐん俺との距離が縮まっていく!


ヤバい!絶対絶命だ!


すかさず急ターン!


直角90度に曲がり逃げ続ける。


どうだ!この軽快なフットワーク!


ダチョウはスピードを落とした。


ホッと一息・・・



したのもつかの間。


すぐにこっちを振り返りまた追ってきた。




ギャ―――ッ!(泣)




延々とこの繰り返し・・・。(号泣)



世界広しと言えどダチョウに追われた留学生は俺ぐらいだろう・・・。



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LOS ANGELS での事件







とうとう帰国直前オリエンテーションの日が来た。


明日、約1年間のアメリカ留学を終え、日本に帰国する。


Los Angels(ロサンゼルス)に集まって一緒に日本へ向かう。


俺は帰国1期組と2期組に分かれたうちの第1期組だ。


そして今日は最後のイベントがある。


みんなとディズニーランドへ行くのだ。


ディズニーランドの他にもカリフォルニアアドベンチャーもある。


2つの遊園地からどちらかを選べるのだ。


俺が選んだのはもちろんカリフォルニアアドベンチャー


選んだ理由は2つ。


ディズニーランドは子供向けの乗り物が多いから。


そして他の AY●SA 生の動き。


8割以上が女子なのでほとんどディズニーランドへ。


だったらすいてるカリフォルニアアドベンチャーにしようと決めたのだ。



予想は大的中。


どの乗り物もほとんど待たずに乗ることができた。


俺と慎太郎金さんなど仲のいいメンバーで行動した。


コインロッカーに荷物を預けて手ぶらで行動。


ジェットコースターなどいくつか乗ってからおみやげ屋へ。


色々と見て回っているとアメリカならではの面白いものがあった。


めちゃくちゃ体に悪そうな色のグミ。


俺のヒザをも覆い隠すほどでかいシャツ。


さらにはSMにも使えそうなムチらしきもの。




さすがはアメリカ!お土産までアメリカンです。


あのムチらしきものは一体何に使えと言うのだろうか?


そんなネタのようなお土産グッズの中にさらにすごいものが・・・。


数ある品々の中で群を抜いて光っていた。


それを見つけた時、一瞬にして心を奪われてしまった。


金に余裕があれば必ず買っていた。


それは・・・




ミッ●ーのパクリもんキーホルダー





ディズ●ーランドは隣だぞ!


灯台下暗しとはこのことか!


誰が見ても明らかにミッ●ーマウスだろ!


少し感じは違うが酷似しまくっている。




カリフォルニアアドベンチャー、確信犯だろ。


おみやげ屋を出ても大盛り上がりの俺達。


他の AY●SA 生もやって来て歩き出した。


そのままハイテンションでジェットコースターの列に並んだ。


10分もしないで乗ることができた。


スタート直後にありえないぐらいの猛加速。


むち打ちになるほどの猛加速だ。


さらに上下を繰り返し、カーブを曲がり、そして1回転。


これだけのスリリングなジェットコースターがタダで乗れる。


1周してスタート地点に戻ってきたジェットコースター。


ところが列に目をやると1人も並んでいない。


そのまま座席から出ずにもう1周することにした。


なんてラッキーなんだ!


こんなジェットコースターに並ばずに何度も乗れるなんて!


そのまま2周目がスタートした。


また超加速の後、上下やカーブの繰り返し。


そのまま1回転!


そして再び坂を駆け上がる。


その時だった。




ガタン



えっ!?


何が起こった?


しーんと静まり返るジェットコースター。




ジェットコースターが最頂部で止まった。


ぎゃー!


何なの?一体!


帰国直前、最後の最後までネタまみれですか!?


しばらくして救助隊がやって来た。


何しろ最頂部だけあってめちゃめちゃ高い。


下に見える人がアリより小さい。


一体何mぐらいあるんだ!?


救助隊は命綱を非常階段の手すりにくくりつけた。


1人ずつ手を取り、非常階段まで引っ張り出された。


「非常階段で下まで行ってください」


おぉ〜っ!


初めての経験だ!


ジェットコースターが止まるだけじゃなく、


非常階段を通って下まで行くなんて貴重な体験だ。


あまりに高くて少し、いや、かなり怖いがテンションが上がる。


さぁ、救助隊員よ!俺たちにも命綱を!




は?ない?  マジ?本気でないのか!?


ざけんな!下を見ろよ!


どんだけ高ぇーと思ってんだよ!


下にいる人はアリより小せぇーじゃねーかっ!


しかも手すりは片側しかないじゃん!


こんな高いんだから風だって強いんだぞ!?


反対側に足を踏み外したら即死じゃないか!


自分達は命綱あって、俺らにはなしか!


ひでぇーな、アメリカよ!


手すりがちぎれるぐらい握り締め1段ずつ下りる。


わずかな幅の階段。左は地面まで何もなし。


力いっぱい何もない。



数分かけて階段を下り、無事生還。


帰国直前までネタまみれの留学生活。


何とか無事に(?)約1年間を生き抜いた。



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